○「地域イントラネット」              大阪府柏原市

1.これまでの経緯

 平成12年度
  インターネット技術を活用して市内各学校及び主要施設をネットワーク化。
  @学校情報共有システム
  A地域住民相談システム
  の構築により、市民サービスの向上と豊かな市民生活の実現、地域社会活
  動の活性化を図る、という目的でこの事業を採択申請。採択内示を得た。
  平成12年度電気通信格差是正事業に補助金交付申請。交付決定を得た。
 
 平成13年度 
  
  業務委託契約を締結。
  相手方NTT西日本。契約額83,842,500円。
  うち国庫補助金額は    27,947千円(1/3補助)
  4,470万円 起債、1,195万円が一般財源
  同年10月1日稼動開始。


2.柏原市の地域イントラネットの特徴

 @概要
  ・教育センターと市内6小中学校、10公共施設をネットワーク化。
    市教育センター     市役所、同別館、水道局、市立病院
    4小学校        市民会館、文化センター、公民館
    2中学校        老人福祉センター、心身障害者センター
                健康福祉センター
  ・システム構成
   情報公開端末11基   市役所2、教育センター、市民会館ほか
   行政相談端末96基   市役所ほか
   学校教育端末54基   各学校
 A地域住民相談システム
  ・市のホームページは各課が更新、情報を迅速化。
   (職員に対してHP作成の研修を実施)
  ・各課がそれぞれに外部とのメールのやりとり、情報検索が可能に。
  ・グループウェア「サイボウズ」の導入により、会議室予約、庁内連絡が
   簡略迅速化。
  ・職員用のイントラネット電話(IP電話)が使用可能。
  ・今後はHPのバリアフリー化を課題としている。
 B学校情報共有システム
  ・生徒にインターネット環境を用意。学校内外を問わず情報を共有。
  ・「柏原市立学校情報教育基本方針及び情報活用マニュアル」を市教育委員
   会が作成、これに基づく運用。
   ○学校ホームページの作成…部活動や特色ある学習活動、学校行事紹介
   ○学校のデータベース化…指導案、調査物、図書蔵書、授業教材など共
    有
   ○活用法の研修などにより、情報教育活性化を図る
  ・授業での活用
   ○国語…ビジュアルと音楽を加味した詩の朗読、漢字の筆順、辞書
   ○社会…歴史資料調べ、立体(3D)地図
   ○数学、算数…アニメーションにより数や形を理解、計算ドリルや図形
    のシミュレーション
   ○理科…CCDカメラを利用した電子顕微鏡、天体シュミレーション、
    電子図鑑の活用
   ○音楽…いろいろな楽器を使った演奏や作曲、音楽鑑賞
   ○教科外…時間割作成、成績処理、図書管理、自動採点など
   ○その他…体育祭や文化祭での撮影作品、音楽作りをし、学校ごとに発
        表しあう。中学ではテレビ会議で韓国プサンと交信、など。
        また地域のお年寄りとの交流活動
        例えば「地域の環境を守ろう」とのテーマで地域の自然を調
        査することから国際的視点を養うことまでねらう。結果をフ
        ァイルに蓄積し、ポートフォリオに役立てる。

 Cランニングコスト(年)
   役務費 
    通信運搬費 ワイドLAN地域イントラネット網 8,536千円
          スーパーOCNライト接続料    3,601千円
   委託料    
    保守委託料 システム保守一式         5,899千円
          空調機保守              189千円

                       合計  約1700万円



3.感想

  横須賀市の先進例を参考にしたとのことでした。同市では幹部が全員、コ
 ンピュータを使えるようにするには、まず電子決裁を早期に導入することだ、
 とのアドバイスを受けたそうです。
  2002年、柏原市は「情報化推進計画」を策定。国のe−ジャパン戦略
 の趣旨に基づき大阪府も情報化計画を策定。それにリンクする形で、柏原市
 もオリジナルの地域イントラネット導入による市全体でのITの利活用を本
 格開始しました。同計画の各論では、教育、医療・福祉、産業などの部門に
 おける情報化が論じられており、その具体的な推進策として、この地域イン
 トラネット構築となったものです。
  これにより、各学校同士がネットで結ばれ、子どもたちが大いにITの環
 境に慣れ、また活用できるようになっています。また、市役所業務のIT化
 の推進で、ともすればITに弱い幹部職員も率先して研修を受け、仕事の簡
 素化や迅速化についていっているだけでなく、市内の公共施設に置かれた端
 末を操作することで、市民もITの恩恵によくしているとのことです。
  感想として、まず、ITの技術は日進月歩であり、ハード面の導入が数年
 後には陳腐化してしまうという悩みがありますが、国のいわゆる「デジタル
 デバイド対策事業」に則った補助金活用がなされているとはいえ、一般財源、
 そして起債による資金繰りも少なくありません。たとえば柏原市の場合、シ
 ステムの中にIP電話のシステムまで組み込まれていますが、職員にお尋ね
 したところ、現在の時点ではスムーズな利活用がなされていないように感じ
 られました。また市内11ヶ所に置かれた情報端末についても、見るからに
 大きな装置であり、これをどう内容的に充実させていくか、そこのところが
 今後常に問われていかなければならないところと思います。
  次に、セキュリティの問題があります。説明を受けた後、システムが置か
 れている場所に案内されましたが、職員のIDカードや、住基ネットのシス
 テムからの情報流出の心配などに対し、職員の方の説明では、徹底したセキ
 ュリティが図られているとのことでした。日々、新型のウィルスの発生、ハ
 ッカーによる脅威が話題となる昨今、「ほんとうに大丈夫なのか」という疑念
 が、メカニズムに詳しくない私たちの素朴な心情として、拭い去れません。
  しかし、そのような心配をしていたら、それこそITの活用や情報化は全
 く前に進まないことも確かです。柏原市は国のデジタルデバイド対策補助金
 を用いていましたが、まさしく、これからのIT戦略に欠かせないのが、現
 状でパソコンを使いこなせない方々、障害をお持ちの方々にいたるまで、広
 く平等にその恩恵に蒙れてこそ、情報化が市民の福祉向上につながるもので
 あり、その面での施策の推進が欠かせません。この点は柏原市もこれからの
 継続的な課題とおっしゃっておられましたが、どこまでを行政がやるべきな
 のか、悩ましい側面もあることを感じます。
  ぜひとも、IT戦略の推進をする上で、「そんなことにおカネを使っても、
 わたしには何の恩恵もない」という市民が少なくなるように、配慮をしつつ
 進めなければならないと感じました。その上で、具体的なシステム導入の検
 討にあたり、コストの検討を加え、たいへん読みづらいであろう将来性、I
 Tの今後の流れを見透かしながら、ハードの投資を検討していかなければな
 りません。
  今回、研修にお邪魔し、ともかく市職員が一丸になる、そして学校現場の
 教職員の皆さんにも、ITに明るくなっていただく、そうしたことがまず大
 きな壁として立ちはだかっていたと想像され、それを乗り越えた、また乗り
 越えようとしていることに大きな評価をしたいとともに、市民の声や市民の
 希望、そして市民の知恵をどう取り入れながらこのシステムを構築していく
 か、そういう面にもこれから意を注がなくてはならないとも感じました。「市
 民が何をしてほしいのか」。それをまず、行政が自分のものとして収集してい
 かなければならない、丸亀市にとってはそれが喫緊の課題であるとの印象を
 持ちました。

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